5歳のころ、「ブルーサンダー」を観てからパイロットに憧れ続けた日々。40歳になった今、夢の実現に向けて一発奮起し未知の世界に飛び込んだKさん。これから先もパイロットとしての挑戦はまだまた続きます。
ーーどうしてライセンスを取得しようと思ったのですか?
5歳くらいの時にブルーサンダーと言う映画を見てヘリに憧れ、9歳の時にトップガン、10歳の時にエアーウルフにはまりました。
ヘリと戦闘機で迷ったのですが、脱出装置が付いていていざという時はベイルアウトができる戦闘機のパイロットになろうと思いつつ、しかし動物学者の道もあきらめきれませんでした。
18歳の時に自衛隊の航空学生を受験してみたものの落ち、動物学の方へ進みました。動物学の方ではそれなりに夢を叶えたのですが、燃え尽き症候群的な状態となり、なんだかしっくりこない毎日を過ごしていました。
40歳になり、「人生全力で動けるのは後半分くらいかな」と思った時に、パイロットになる夢があったと思い出しました。今からどうやったら戦闘機のパイロットになれるのか調べて、なんだかなれそうな気がしてきたので、奥さんに「パイロットになる日がきたっぽい。今年行かせてくれ!」と話し、ライセンスへ向けて一歩踏み出しました。何より操縦が楽しいからです。
ーー費用はどのように準備されましたか?
今までいっさい遊びもせずに頑張ってきたのでお金で苦しむことはない人生でした。なので普通にパイロットライセンス用に割り当てました。
今でもパイロット用はパイロット訓練費として自分で稼いで訓練を続けたいと思っています。自分で稼いだお金で自分に投資して自分がパイロットになるのに意味があると思っています。すべて自分でやることで達成した時の感動が違います。
ーーお休みはどのように取られましたか?
自分の性格上、自由に生きるのが信条で、小さい頃から将来は誰にも命令されることなく全て自分の責任で自由に生きると決めていたので、23歳の時に起業して以来、自営業です。
いつでも休めて、お金が必要なら2倍3倍仕事して稼ぐという感じで家族を養ってきました。渡米のため、いつもの2倍仕事を頑張った後、休業をして渡米しました。訓練は1カ月半行い、帰国して3か月仕事2倍頑張って次の訓練費と家族への生活費を作って、再度渡米してライセンスを取りました。
ーー初めて操縦桿を握って空を飛んだ感想は如何でしたか?
操縦はめちゃくちゃ自信があったのですが、初めてセスナのエンジンをかけた時、音にびっくりして恐怖を覚えました。とにかくエンジンが爆音すぎて怖かったです。飛行機で空を飛ぶというのも思った以上に怖く「今は隣に教官が座って見ていてくれるけど、最終的にはこれを1人で飛ばすのか。無理だな」と思いました。本当に怖かったです。しかし思ったよりは酔わなかったので頑張ればイケるのでは・・と。次の日にはやる気満々で学校に行きました。
ーー初めて単独飛行(ソロフライト)をした感想はいかがでしたか?
着陸が思うようにできず、ソロ前で足踏みをしてしまい本当に辛かったです。始めてソロ飛行をした時はもちろんうれしかったですよ。
ただ初ソロ以上に思い出に残っているのが初ソロクロスカントリーです。教官がいない自分だけのセスナでクロスカントリーに行ったとき、一人でアメリカの大地を横断しているという現実に鳥肌が立ちました。町がだんだんなくなって標高が上がって山々が出てきて、その先から大地の色が変わって赤く広がっていたりと、「自分が飛びたかったのはこういう風景をみることだ」と、「半年前に思い描いていたのはこれだ」と、涙が出てきました。
ーーライセンスを取得された感想はいかがですか?
今も合格した時のことを思い出すと涙が出ます。試験官から「Good Job, you passed!!」と言われる前に、最後の着陸をしたときに「ああ合格した、ほとんど完璧だった」と思って合格告げられる前に泣いていました。とにかく一歩踏み出してよかったと。半年前にパイロットになろうと決意していなかったら今も成長しないまま、ただの毎日を過ごしていたのだろうなと思います。これからもパイロットとしてさらに磨きをかける気満々ですし、自分の可能性が広がったと思います。
ーー1番苦労した点は何でしたか?
人によってさまざまだと思いますが、自分の場合、とにかく着陸がうまくできなかった。コツを掴むまで時間がかかりました。あと、学校までは自転車で行きますが、カリフォルニアで車なしでの生活は辛く学校からの帰り道などで効率良く買い物をしないと移動時間だけで数時間失います。
ーー今後ライセンスを取得希望される人へ何かアドバイスはありますか?
飛行機のライセンスに限らず自分がやりたいと思ったことには挑戦することが大事です。明日からすぐやる事。今すぐ始めること。私たちの時間は限られています。しかし、多くの人はこの時間が永遠に続くかのように、何もせずに過ごしていればいつか幸せが向こうから来るだろうくらいの思いで生きているのではないでしょうか。わかっちゃいるけど、変えられない、やめられない、今はまだやらない、なんてことがたくさんあるはずです。そういうのをぶち壊して一歩進む勇気と根性が大事です。
ーー最後に何かありますか?
パイロットになるということは飛行機の操縦はもちろん、地球にも詳しくなるということです。天候を予測したり、風向きを考えたりしないといけません。空を飛んで、初めて雲から雨が降っている様子を真横から見た時、衝撃を覚えました。地上に居るときはただ上から降ってくる雨です。真横から見るとすごいです!自分は地球のことを全然知らないのだなあ、まだまだ見たことない物がたくさんあるんだなあ、たかが雨でこんなに感動するものなのか!と実感しました。パイロットになるための費用、それに費やす時間や労力は安くはありません。しかしそれ以上のモノを手に入れられます。
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